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涼しいですね

黒タイツの季節。
Cさんとこへの「くすぐりの塔」の移転が始まりましたねー。
Cさんもキャンサーさんもお疲れ様です。
塔はこのジャンルに入ってすぐ読んだ覚えがあります。
召喚術師のお姉さんがローパーにくすぐられるシーンが特に好きですねー。

あ、今さらながら掲示板への書き込みにレスをさせてもらいました。
今週末には掲示板自体を削除しますが、ご了承下さい。
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うわぁ

うちのサイトには掲示板がありますよね。
あれはかなり前から無くそうと思ってたんですが、作った時のメアドが分からなくなったりで放置してたんですよ。年単位で。
で、さっきようやくログインできたので、明日には(こっちで)返信した後に削除します。
放置している間に感想を書いてくれた方々は本当にありがとうございます&すいませんでした!
今はこのブログがあるんで、感想やら要望はこっちに気軽に書き込んで下さい。

ちなみに、次に書くのは途中で止まってるSSの続きかなーと。
プロレスごっこ・ロリホワイト・くすぐり調教あたりの予定。
プロレスごっこは最近のだから書きやすいはず。
ロリホワイトは別に書きたいネタが浮かんだので、そうそう意味では優先度高め。
くすぐり調教もラストまでの流れは考えてあるんですが、私の書くガチエロ系は需要が少なそうでなんとも。
まずはプロレスごっこかなぁ。

単発SS書きましたとさ

たまには恋人同士のラブラブ(死語)な話もいいよね!
ということで、昨日の夕方~夜で一気に書いてみました。
例によってブロッサムさんの絵からインスピレーションを得たんですが、そういう時は大体ペースが早めです。
お風呂とか温泉でのイチャイチャ(死語)はロマン(死語)ですよねー。
一人称視点のSSは書きやすいんですけど、なんかあんまり書いてません。

お風呂でいちゃいちゃ

「お風呂、お~ふろ~」

歌いながらお風呂場に足を踏み入れる私。
浴槽の蓋を開けていると、背後からガラガラと扉を開ける音がした。

「ずいぶん上機嫌だね」

そう言ってお風呂場に入ってきたのは、及川美空ちゃん。
もちろん、水着なんて邪魔な物は着ていない。
私と同じで正真正銘の全裸だ。

「そりゃ上機嫌にもなるって。だってお風呂の後は……ねぇ」
「はいはい」

この私―木村葵と美空ちゃんはクラスメイトであり、恋人同士だ。
「え?女の子同士で?」とか何とか突っ込みたいかもしれないけど、できればスルーして欲しい。
色んな形の愛があるのですよ。
こうして一緒に入浴するのなんて当たり前だし、お風呂でさっぱりした後にベッドで色々するのもいつものことだ。

「あ、日本史のレポートやった?月曜までのやつ」
「やったけど写させないよ」
「えぇー?」
「まだ土曜なんだから、今日明日で十分やれるでしょ」
「うぅー…お堅いですなぁ」

軽くシャワーを浴びて、先に湯船に浸かる。
我が家の湯船は2人で入るには少々狭いので、必然的に順番に入ることになる。
美空ちゃんはその綺麗な体を隠すこともなく、わしゃわしゃと髪を洗い始めた。

「いいねぇ、髪もキレイで…私も黒くしようかなぁ」
「葵はそのままでいいって。黒って重たく見えるし、そのぐらいがちょうどいいよ」

そんなものだろうか。
自分の明るい栗毛も気に入ってはいるが、白い肌との相性では黒髪が勝っていると思う。
両手で髪の毛を泡立てる度に美乳がふるふると揺れて、なんとも目に嬉しい。

「……目つきがやらしいんだけど」
「うへへ、美空ちゃんの体が素晴らしいもんで」

ジト目で見てくるものの、美空ちゃんは体を隠したりはしない。
張りのある乳房に、小さめの乳輪と乳首。
これは男じゃなくたってガン見しちゃうよね。

「よく言うよ、そっちのがいい体してる癖に」

頭を洗い終え、今度はよく泡立てたタオルで体を洗い始める美空ちゃん。
おおぅ、広げた腋がなんともセクシー…!

「だから、目つきがやらしいっての。発情し過ぎなんじゃないの?」
「しょうがないじゃん、一週間ぶりだしー」

お互い委員会だの部活だので、こうしてゆっくり時間が取れるのはちょうど一週間ぶりなのだ。
女子高生だもの、恋愛以外にだって色々忙しい。
泡にまみれた美空ちゃんの身体を見ていると、ドキドキするしムラムラもしてしまう。
うーん、今だけあのタオルになりたい。

「はーい、交代。ちゃんとよく洗いなよ」
「分かってるってば」

全身を洗い終えた美空ちゃんに湯船を譲り、今度は私がシャワーを使う番だ。
私はだいぶ髪が長い方なので、正直言って洗うのが大変だ。
とは言っても髪形は気に入っているので、面倒だからといって手を抜くわけにもいかない。

「ふぅ……ん、どうかした?」
「んー、なんかまた胸大きくなってるような気が…」
「そうかな?ちょっと分かんない」

特にそんな気もしていないけど、成長期だし、またちょっと大きくなったのかもしれない。
まぁ、平均より結構大きいって自覚はありますとも。
よーくシャンプーを洗い流して、今度は体だ。
さっさと洗い終えてイチャつきたいので、スピーディーにゴシゴシとタオルを動かす。
本当はリンスとヘアパックもやっておきたいけど、時間が勿体無いから今日は無しで。

「ちょっと、もっと丁寧に洗わなきゃ。肌に良くないよ」
「いいのいいの、そんなヤワな肌じゃないから」

首から足の裏までタオルを滑らせ、さっさと泡をシャワーで流してしまう。
さーて、あとはもう1回湯船に入って終わり……と、そこで私の動きが止められた。

「どしたの?」

どういう意図を持ってのことだろうか。
湯船から上がった美空ちゃんが、背後からぎゅっと抱きついてきたのだ。

「嬉しいけど、お風呂上がってからにしよ?アイスも買ってあるしさ」
「違うって。まだ体の洗い方が足りないってこと」
「えー?大丈夫だって、別に……って、うわっ」

苦笑しながら振り向き、美空ちゃんの目を見てやっと気づいた。
美空ちゃん、完全にスイッチ入ってる。
口ではそれっぽい事を言いつつも、私で遊ぶ時のモードになってる。

「若い内に油断してると、大人になってから荒れるからね。面倒なら私がちゃんと洗ってあげる」

私の身体を左腕でホールドしたまま、美空ちゃんは右手にボディソープをとる。
そして、タオルも使わずに私の目の前で両手を泡立て始めた。
ぐちゅぐちゅと音を立てながら絡み合う両手が、なんとなくいやらしく見える。

「い、いいって。洗うんなら自分で洗うし……うぁんっ!?」

ぬるりと脇腹を撫でられる。
やばい。今日は私が攻めようと思っていたのに、これではベッドに入る前から美空ちゃんのペースだ。
私達はネコとかタチとかあんまり意識していなくて、どちらが主導権を握るかはその時の雰囲気次第なのである。
で、今回は美空ちゃんを虐めてやろうと意気込んできたのに…!

「遠慮しないの。ちゃんと綺麗にしてあげるから」

口ではもっともらしいことを言いながら、美空ちゃんは両手で私の身体をまさぐる。
やばい、やばいって。
使ったことないけど、ローションってこんな感じなんだろうか。
ヌルヌルしてて、はっきり言って気持ちいい。

「は、発情し過ぎとか言っといて、そっちこそえろくなってるじゃん!」
「葵と一緒だよ。葵が体洗ってるの見たら、ちょっと我慢できなくなっちゃって」

手を掴んでやめさせようにも、滑ってしまって上手くいかない。
膝立ちの状態から立ち上がることもできず、これではなすがままだ。
あっ、ちょっと、そこはかなり際どいっってば…!

「ところでさ、葵」
「何さ!?」
「今日ね、ちょっと試してみたいプレイっていうか、やってみたいことがあるんだけど…」

やってみたいこと?
こんないやらしい事をしながら、更に別のプレイを要求しますか。
いや、まぁ嫌ってわけじゃないんだけど。

「い、いいけど、何するの…?」
「今ちょっとだけ試していい?」
「えーっ……うーん、じゃ、ちょっとだけなら」

美空ちゃんのことは信用してるし、私が本気で嫌がるようなことではないだろう。
ぶっちゃけこのボディソーププレイ(?)も気持ちいいし、ちょっと期待しちゃう。

「やった。じゃ、遠慮無く」

両手にボディソープを補給する美空ちゃん。
私は期待半分不安半分でその手を見つめる。
うぅ、どこ触ってくるんだろう?
怪しく光る両手は、ゆっくりと私の体へと近づいてくる。
手の軌道的には…肩かな?いや、肩ってことはないか。マッサージじゃあるまいし。
そんな的外れなことを考えている隙に、ヌルヌルの両手はスッと私の両腋に滑り込んだ。

「え?まさか、ストッ……きゃははははっ!!」

美空ちゃんの手は、隙だらけだった私の腋をこちょこちょとくすぐり始めた。
不意打ちだったこともあって、私は思わず笑い声を上げてしまう。

「やっ、なに!?あはっ、待って待って…なんでくすぐるの!?」
「なんでって、これがやりたかったんだもん。くすぐりプレイ」

手の動きを止め、悪びれた様子もなく平然と言い放つ美空ちゃん。
くすぐりプレイ!?
やったこともないし、聞いたこともない。

「ネットで見たんだけど、くすぐったいのって気持ちいいのと同じ種類の感覚なんだってさ」
「うさんくさいなぁ…全然違うと思うけど」
「まぁ、ちょうどくすぐりやすい状態だしさ。もうちょっと試してみてもいいでしょ?」

そう言うと、美空ちゃんは再び私をくすぐり始める。

「ちょ、いいって言ってないっ…!やっ、ダメだってばぁっ…うふふふふっ!」

私は特別くすぐったがりではないと思うけど、くすぐられたらくすぐったいのは当然だ。
ボディソープのせいで指の滑りがよくなってて、多分そのせいで普通よりも余計にくすぐったい。

「どう?こうして優しい感じにくすぐってみたりしたら、ちょっと気持ちよかったりしない?」
「ぅくくっ……し、しないってばぁ…」
「そう?なんかいい感じの顔になってきてるけど」

腋だけに留まらず、美空ちゃんは他の場所もくすぐってくる。

「うぷっ……ぁははははっ!だめだめっ、くすったい…んぅっ!?」
「おっ?この辺、感じちゃう?」

流石は美空ちゃんと言うべきか。
私の反応の変化を見逃さず、背筋を繰り返し攻撃してくる。
滑りの良い状態の指で背骨のラインをつつーっとなぞられると、思わずゾクゾクと震えてしまう。

「ふぁっ……ち、違うって!ちょっと気持ち良かったけど、それはくすぐり関係無いじゃん!」

そう、今のは厳密にはくすぐりじゃない。だからノーカン。
私はくすぐりで感じてなんかいないのだ。

「じゃ、これなら?」
「っ、くっ、ふぁあんっ……!」

背中を指先でこちょこちょとくすぐられ、不覚にも甘い声を洩らしてしまった。
振り向くと、美空ちゃんがニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべていた。

「あれあれ?葵、くすぐりで感じちゃった?」
「ぐっ……!」

顔が熱くなる。
動じていない風を装いたいけど、あんな声を出しちゃったら意味無いよね。

「素直になっていいんだよ。ほーら、こちょこちょこちょ…」
「うっ、ふぐっ、くふふふっ…」

うぅ、意識してしまうと駄目だ。
一度インプットされてしまった「くすぐったいのが気持ちいい」という情報は消えない。
おまけに、美空ちゃんの触り方がまたズルい。

「葵、前からここ弱いよねぇ…あとでたっぷり虐めてあげるからね」
「ぁ……だめ、だめだって……っ、きゃははははっ!?」

太股の内側を思わせぶりに撫でたかと思いきや、脇腹をグニグニと揉んで私にはしたない笑い声を上げさせる。
美空ちゃんは、普通に気持ちいい愛撫とくすぐりを使い分けて私を混乱させにかかっているのだ。
それは分かっているけど、じんわりとした気持ち良さに抗うことができない。

「ふむ、やり方によってはくすぐりって本当に気持ちいいんだねぇ。よく分かったわ」
「わ…分かったなら、もういいでしょお…?」
「まぁまぁ、これも前戯ってことで」

早くもコツを掴んだようで、美空ちゃんは私の体に絶妙な加減のくすぐったさを与えてくる。
反射的に暴れてしまいそうでギリギリ手が出なくて、笑っちゃうんだけど同時に気持ちいい…そんなくすぐったさだ。
私の体をほぐすように揉み、的確に急所をつつき、舐めるように撫でてくる。

「あははっ……ん、あふっ…くくっ…」
「えっちな声出てるよ」
「だ…出させてるくせにぃっ…」

耳元で囁かれて、余計に気持ちが高まってしまう。
美空ちゃんは私が微弱なくすぐったさに慣れてきたのに気付き、くすぐりをやや激しくする。

「はっ…強過ぎ…あっはっはははは!!」
「大丈夫。ちゃんと慣らしてあげるって」

いや、慣らされるのが怖いんですけど!?
くすぐりが気持ちいいとか、やっぱりちょっと変だと思うし。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、美空ちゃんは私の弱点ばかりを狙ってくすぐり始める。

「くすぐりと言えば腋、腋と言えばくすぐりよね」
「くふっ!!うぷぷ…き、聞いたことないしっ……ぅんっ、はうぅ…」

腋を締めても、ボディソープにまみれた手の侵入は防げない。
きつく閉じた腋に左手の指先が入りこんできて、クチュクチュと音を立てながら強烈なくすぐったさを送りこんでくる。
同時に、右手は腰からお尻の辺りをいやらしく撫で回し、ムニムニと揉みしだいて官能的な刺激を与えてくる。

ohuro
挿絵:ブロッサムさん

「ひゃははははははははは!!くすぐったい~!!」
「やっぱり私より全然いい身体してるって。最高の触り心地してるよ」

美空ちゃんは我が物顔で私の身体を堪能している。
ぬいぐるみみたいな褒め方はどうかと思うけど、今はそれどころじゃない。
腋に潜りこんだ指はモニュモニュと深く食い込んでいて、このくすぐったさは我慢なんてできっこない。
なのに、右手の愛撫のせいで、それも何割かは気持ちよさに変換されてしまう。
これは本格的ににやばい。
まさか、くすぐりで……イっちゃう…!?

「み、美そりゃちゃ…止めへ、へへっ…!」
「えー?どうしようかなー」

美空ちゃん、私がどういう状態なのか絶対に分かってる。
その上でこうして私を追いこんでるんだ。
あぁ、でも……イイかも…?

「ははっ…く、くひゅぐったいぃ…」
「はい、おしまーい」

あと一歩で絶頂に達するというところで、ぴたっとくすぐりが止まった。
え?なんで?どうしてこのタイミングで?
名残惜しい目で訊ねる私を放置して、シャワーで手についた泡を流す美空ちゃん。

「な、なんで?どうして!?」
「んー。新しいプレイで初めてイかせるのはベッドの上がいいかなって」
「そんなの…」

そんなよく分からないこだわりで寸止めされても困る。
この火照った身体をどうしろと言うのか。

「続きをして欲しかったら、あとで可愛くおねだりしてね」
「こら、待っ―」
「あんたはちゃんと石鹸流してから。あ、見てないからって自分でしちゃ駄目だよ」

追いすがろうとする私を押しとどめ、美空ちゃんは扉の向こうへと消えてしまった。
今すぐに追いかけたいが、確かに泡だらけで出るわけにもいかない。
美空ちゃんの思惑通りに動かされるのは面白くないが、ここは素直にシャワーを浴びよう。

「まさか、久々の逢瀬でこんな目に遭おうとは…」

まさかまさか、くすぐりなんかで感じさせられるとは夢にも思っていなかった。
腋にはまだ美空ちゃんの指先の感触が残っている。
うーん……不本意ながら、一発で虜になっちゃったかも。
泡やら汗やらを流しながら、私はどんな台詞で「可愛くおねだり」しようかと思いを巡らせるのだった。

くすぐり姫の陥落、アップ完了

見ての通り、このブログにも1~16をまとめてアップしました。
携帯から見てる方なんかはこっちの方が見やすいかもしれませんね。
感想とか待ってます。待ってますよ。

今回は「耳責め書きたい!書く!」という衝動を形にするために書き始めたんですが、例によって短くまとめることはできませんでした。
その代わり(私にしては)ハイペースで仕上げられてので、結果的には悪く無かったなーと。
ブロッサムさんがサプライズ的に挿絵を描いてくれたのも嬉しいですね。
ちなみに「くすぐりに強い子をくすぐりで倒す」というのもサブテーマだったりします。

次に書くものも決まりつつあるんですが、候補が複数あるのでまだ迷っていたり。
一息に読み終えられるような長さのを書きたいので、短くまとめやすいテーマを選ぼうと思います。

くすぐり姫の陥落 その16(完)

「あらあら…よいしょっと」

放っておけば椅子から落ちてしまう。
胡桃は柚子の頭を支え、そっと自分の膝へと下ろした。

「ちょっとやり過ぎちゃったかしら?」
「ぶっちゃけ、ちょっとじゃないよね」

柚子を膝枕すると、胡桃は優しく彼女の頭を撫でる。
くすぐりをやめて素に戻ってみれば、どう考えてもやり過ぎだ。
意識こそ失っていないようだが、柚子は虚ろな目で小刻みに震えている。

「大丈夫ですかね?なんかプルプルしてますけど…」
「平気だって、あたしだってこの位はやられてるもん」

そうは言いつつも、若干心配そうな顔の琴音。
自分と違って柚子はこんなにくすぐられた経験が無い。
それどころか、くすぐりで笑わされること自体が初めてだ。
何も知らない者が今の柚子を見れば、屋外で水分も取らずにマラソンでもしてきたのかと思うかもしれない。

「えっと…姫ちゃん、大丈夫?」

問いかけてみるが、荒い息を吐くのみでほとんど反応が無い。
どうしたものかと思案していると、静かな教室にチャイムの音が鳴り響いた。

「…5時ですね。楓、うちらはもう帰らないと」
「え?あ、もうそんな時間かぁ」

残暑とはいえ、窓の外は暗くなり始めている。
終わってしまうとあっと言う間だった気がするが、実際にはかなりの時間が経っていたようだ。

「宮間。ほら、私達もそろそろ急がないと」
「そうね。琴音ちゃん、柚子ちゃんをお願い」
「えっ、あ、はい」

琴音と膝枕を交代すると、胡桃はぐっと伸びをする。

「うう~ん…ずっと座ってると、それはそれで疲れるわよね」
「そんなぼけーっとしてる暇無いって。先に行っちゃうよ」

慌しく帰り支度をする4人。
門限の厳しい鈴原姉妹はともかく、3年生の2人までそんなに急ぐ必要があるのだろうか。
一貫校なので受験勉強など必要無いのだし、部活のある日はもっと帰りが遅くなるだろうに…
琴音のそんな疑問を余所に、4人はさっさと教室の入り口へと向かう。

「ちょっ、なんかみんな急ぎ過ぎじゃない!?」
「別にー?」
「さようならー」
「また呼んで下さいねー!」
「戸締りも任せたわよ。それじゃ、また今度」

引き止めようにも、太股に乗せた柚子の頭が非常に邪魔だ。
追いすがる間も無く、ぱたんとドアが閉められた。

「なんなの……って。そういうことか」

ようやく気づいた。
4人は柚子が回復する前に逃げたのだ。
鈴原姉妹はともかく、胡桃と翠の急ぎ方は明らかに不自然だった。

「押し付けられちゃったかぁ…まぁ、別にいいけど。幼馴染だもんね」

いたわるように柚子の頭をよしよしと撫でてやると、表情が和らいだ気がした。
まだまだ元気には見えないが、少しは呼吸も落ち着いてきたように見える。

「……琴音ちゃん…」
「ん?」

ようやく意識がしっかりとしてきたのか、柚子の目はしっかりと琴音を見ていた。
恨み言の1つでも言われるのだろうか。
それともまさか、今すぐ逆襲してくる?
琴音は思わず身を強張らせるが、そのどちらの予想も外れだった。

「今日のこと、さ。誰にも言わないでよね」
「…はいはい」

真っ赤な顔をしてそう言う柚子が、なんだか妙に可愛く見えた。
口止めなんてされなくても、そんな勿体無いことをする筈がないのに。
柚子の弱点は、これからもずっと自分達だけの秘密だ。

__________________

後日談。
この1件の後、柚子のくすぐりは更に卓越したものになったとか。
くすぐられる側の心理を体で学んだからだろうか。
相変わらず手当たり次第に女の子をくすぐり回っている。
――が、しかし。
彼女のライフサイクルに1つだけ、極一部の人間しか知らないイベントが追加されていた。

「ひーめちゃん。今日の放課後……分かってるよね?」
「うげ、もうそんな日?」

そう。週に1回ほど、あの日の委員会メンバーによる下克上が行われているのである。
他の生徒達と同じくすぐられる側の5人が、この日の放課後だけは柚子をくすぐり返せるのだ。

「いいじゃん、代わりに弱点のことは黙っててあげてるんだから」
「ま、そうなんだけどさぁー」

柚子自身にとっては幸いなことに、一度くすぐりの味を知った今でも、耳と同時に責められなければ他の部分は平気である。
琴音たちが言いふらさない限りは、彼女の立場は守られたままだろう。
今も不定期的に続けられている「姫川柚子対策委員会」でも、5人が柚子の弱点を明かすことは無かった。

「それに、姫ちゃんも癖になってきたんじゃない?私達にくすぐられるの」
「なっ…!?」
「くくくっ、図星だったかな?そいじゃ放課後に!」

柚子が拳を振り上げるよりも早くダッシュで逃げていく琴音。

「あーあ……またくすぐられるのかぁ」

そう呟く柚子の顔は、まんざらでもなさそうだった。



                                       くすぐり姫の陥落 おしまい。

くすぐり姫の陥落 その15

脇腹や足の裏をくすぐられると、楽しくもないのに笑い声を上げてしまう。
笑いすぎてお腹が痛い。息も苦しい。
耳や首筋、それと背中は、くすぐったくてちょっとだけ気持ちが良い。
そんな感覚が混ざり合い、頭が朦朧としてくる。

「はっ、ははっ……ひゃへへへ…」

定期的に休みを挟んでいるとはいえ、疲労によって流石に笑い声が小さくなってくる。
視界は涙で滲み、目の前の琴音の表情もよく認識できない。

(あぁ……私、今まで皆にこんなことしてたんだなぁ…)

酸欠時特有の陶酔感の中、柚子はぼんやりとそんなことを思った。
もちろん毎回全力でのくすぐりを行っていたわけではないが、相手が泣くまでくすぐった経験などいくらでもある。

「こりゃ本当にギリギリだね。皆、あと1分で楽にしてあげよう」
「「了解」」
「「はーい」」

それはもちろん、優しく1分間くすぐってお開きにしようという意味ではない。
今からの1分間で柚子から笑い声を搾り尽くそうという宣言だ。
わざわざ口にせずとも、4人にはそれがしっかりと伝わっていた。

「あ…っ……あははははははっ!!」

今までの中でも、一際大きな笑い声。
柚子自身、まだこんな大声が出せるとは思っていなかった。
既にあらゆる意味で限界だというのに、5人は琴音を強制的に笑わせ続ける。

「ゆるひへ…ゆる、ひ、ひっ、ひひひひひっ!!」
「だーから、許してあげるってば。あと50秒ぐらい頑張ってくれたらね」

くすぐっている5人の方が、柚子よりも目の色が危なかったかもしれない。
絶対的な王者を思うがままにしているという興奮によって、完全に手加減というものを忘れている。

「よーんじゅきゅ…よーんじゅはーち…よーんじゅなーな…」

琴音による、あまりに遅いカウントダウン。
最後の「1分」が終わるのはもうしばらく先だろう。
委員会のメンバーは、欲望のままに柚子の体を弄ぶ。

「にーじゅに…にーじゅいーち…」
「ぁは……っ……ぎゃはっ!ははははははは!!」

笑い声が途絶えようものなら、琴音は脇腹に更に深く指を食い込ませる。
また、鈴原姉妹も両手を使って土踏まずを集中攻撃する。

「ひゃへへへ!…ははっ……じぬぅ……」
「死なない死なない」
「じゅーうごー……じゅーうよーん……」

意識してのことか、琴音のカウントダウンは更に遅くなっていた。
翠と胡桃の筆は柚子の汗でしっとりと湿り、まるで舌のように耳をなぶる。
ゾクゾクと背筋を走る怪しい電流は、くすぐったさと溶けあって柚子を狂わせる。

「姫川、すっごい顔してるよ」
「でも可愛い……他の人達に見せるのは勿体無いですよね」

そして、残り10秒。
4人の遠慮無しのくすぐりを受けながらも、琴音の笑い声は弱々しいものになっている。

「じゅーう……きゅーう……はぁーち……」
「は…っ…!…へへっ……」

喉の奥から声無き笑い声を洩らしつつ、がくがくと体を震わせる柚子。
そんな柚子の顔を眺めながら、4人は悔いが残らないようにと技巧の限りを尽くす。

「なぁーな……ろぉーく……」
「もうおしまいかぁ、名残惜しいな」
「しょうがないですって。これ以上はおかしくなっちゃいますよ」
「ごぉーお……よぉーん……」

できることならずっとくすぐっていたいが、流石にそうもいかない。
ならばあと数秒、自分達にできる最高のくすぐりを行うのみだ。

「さぁーん……にぃーい……いぃーち………ぜえぇ~~~ろっ!」
「ぁ…はっ……っっ~~~!!」

笑い声と一緒に、体力の最後のひとかけらまでも出ていってしまったかのようだ。
くすぐりが終わると同時に、柚子の体は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

くすぐり姫の陥落 その14

「んっ…私は皆様の…ぺ、ペットです…」
「へー、ペットなんだ」
「ぐっ…!」

くすぐったさだけではなく、悔しさと羞恥心による涙が浮かんでくる。
しかし、下手に口答えしてもロクなことにならない。

「…ご主人様、愚かな柚子をっ……ぅふふふっ!?」

唐突に脇腹へのくすぐりが強烈なものになり、台詞を中断させられる。

「くふふっ……琴音ちゃんっ!」
「なに笑ってるの?真面目に言ってよ、最初から」
「ふざけ…!」

思わず口にしかけた暴言を押し留める。
ここで激昂しては琴音の思うつぼだ。
自由な両手で思いっきりくすぐり返してやりたい気持ちを鎮め、柚子は再び謝罪を始める。

「……私は皆様のペットです」

くすぐりは今のところ穏やか。

「ご主人様、愚かなっ……ゆ、柚子を……」
「うふふ、頑張って頑張って」

白々しく応援する胡桃。
彼女の左手は柚子の背中を舐めるように撫で回し、甘いくすぐったさを送りこんでいた。
柚子に恨めしい目を向けられるも、どこ吹く風の涼しい顔である。

「柚子を、お許し……ぃっひひひひっ!!」

再びの阻止。
今度の妨害は鈴原姉妹によるものだ。
土踏まずをガリガリと強くひっかかれ、柚子は抗いようもなく笑い声をあげてしまう。

「やっ……2人とも、ひどっ、くふふふっ…」
「ごめんなさい…」
「だって、言い終えちゃいそうだったもんで」

未だに怯えが完全には消えていない楓と、舌を出して微笑む余裕のある紅葉。
よく似た双子も、思考が丸っきり同じというわけではないようだ。
しかし、どちらもこのイベントを終わらせたくないという気持ちは同じである。

「はい、もう1回始めから」
「も…もう勘弁して下さいよぉ…」

やはり笑顔の翠に促され、柚子の口から泣き言がこぼれる。
長時間の責めにより、肉体的にも精神的にも完全に消耗しきっているようだ。

「無理?」
「無理っ!絶対に無理!」
「うん、じゃあ謝らなくていいや。その代わり……徹底的にこちょばすけど」
「はぅあっ!やっ、め…ぅあっ、あっはははは!!」

脇腹へのくすぐりが一気に強くなった。
疲れきった柚子は腹筋に力を入れて耐えることもできず、琴音の思い通りに笑わされてしまう。

「ちゃんと謝れなくて残念だったねー。言えたらやめてあげてたのに」
「嘘つきぃっ……うぷっ…!ぅんん…っく、あぁあああっ!!」

もう焦らしは十分過ぎる。
あとは本気でくすぐり尽くすだけだ。
4人も指の動きを早め、柚子を全力で笑わせにかかる。

「ひひっ、はっ、はひっ!ぎゃっははははは!!」
「あーあー。姫ちゃん、涎垂れてるよ?みっともないなぁ」
「ちょっと辛そう……でも、しょうがないですよね?先輩がいつもやってることですし」

自分自身も得意としている、抵抗力を奪ってからの執拗なくすぐり。
自らの身で受けてみて、柚子は初めてその辛さを正確に理解した。

「っ……やめ……へへっ…!」

一気に肺の中の空気を吐き尽くしてしまい、早くも笑い声すら絶え絶えだ。
両腕は無意識にじたばたと暴れるが、それにも力が無い。
酸素も不足し、頭がボーッとしてくる。
そうなると、5人はくすぐりを弱めて柚子の呼吸を整えさせ――

「っ……はぁっ…」

そして、ほんの少し回復させては再びくすぐり地獄に叩き込む。

「っあはぁ!!やはっ、はひひひひひっ!ゆ…ゆるじでえぇっ!!」
「だーいじょうぶ、ちゃんと許してあげるわよ」
「そうそう。私達が満足したらだけどね」

胡桃は耳元で囁き、耳の中に吐息を注ぎこむ。
その絶望的な宣告が届いているのかいないのか、柚子はただただ笑い転げる。
両目からは涙が溢れ、頬から滴り落ちてセーラー服に染みを作っていた。

「あひゃひゃひゃ!!!ゆるひへっ…ゆっ、やっははははっ!!」
「かわいそうだけど、もっと姫川の笑い声が聞きたいんだよねぇ」
「先輩、泣いちゃってる……可愛い」

くすぐり姫の陥落 その13

翠は左耳に、胡桃は右耳に、すぼめた口を近づけ――
ふぅーっ……と、息を吹き込んだ。

「ぁ……!?」

指とも筆とは違った、不定形の「息」が耳の奥底へと注ぎ込まれる。
不意打ちかつ初体験の攻撃に、一瞬だが琴音の体から完全に力が抜けた。
それと同時に、琴音の指が脇腹の中でも最もくすぐったいツボを押さえる。

「あ……はっ、あはははははっ!!」

教室に甲高い笑い声が響いた。
5人は目を丸くして柚子の顔を見るが、笑っているのは確かに彼女であった。

「ひひっ!やめ…やめ、ひぇっ、ひゃへへへっ!」

一度笑ってしまっては、もう止めることなどできなかった。
制止の声すら笑い声に変わってしまう。

「やった!マジで姫ちゃん笑ってるよ!?」
「先輩、すっごい声…」
「人に笑わされる気持ちはどうかしら?今まで姫ちゃんが皆にやってきたことよ?」

今まで誰も見たことがない、大口を開けて笑う柚子。
その笑顔はこれ以上無く5人の気持ちを昂ぶらせる。
早くも腹筋が痛くなってくるが、今の柚子にはどうしようもなかった。

「きゃはっ!ギブ、ギブッ……うぷ…はははははっ!!」
「ギブアップとかありませーん」
「もっともっと笑って下さいね」
「貴女達、何気にノリノリね」

鈴原姉妹は靴下を脱がせ、直接足の裏をくすぐり始めた。
攻撃するのは土踏まずだけでない。
暴れる足指を片手で掴み、もう片方の手で指の付けねをくすぐってみたりもする。
汗でふやけてきたからか、皮膚が若干柔らかくなってきたように思えた。

「し、しにゅ……っ…!!」
「こんなんで死んでたら、私達は何回死んでるのよ」
「すっごい声。ほら、ふぅ~っ」

耳には吐息が吹きかけ続けられ、更にくすぐりへの抵抗力を下げられる。
身震いする度に感覚が鋭敏になり、もはや首筋や背中への刺激にすら声を洩らしてしまう。

「やっ、だめだめっ…ひゃはははは!!あひっ、ひひひっ…」

そして、一番辛いのはやはり脇腹へのくすぐりだ。
因果応報とでも言うべきか、琴音の責めているポイントも柚子によって体に教え込まれた場所である。
肋骨と腰骨の間にある、どんなに必死に耐えようとしても我慢がきかない急所だ。

「姫ちゃん、くすぐったい?」
「くすぐっひゃいっ!くひゅぐったい、から、やめへぇえっ!!」

柚子はあっさりと認める。
このくすぐりから解放される為なら何でもするといった様相だ。

「だったら皆に言うことがあるんじゃないの?」
「ははっ……何っ!?んぁっ……にゃにをっ…!?」
「今までの事を謝った方がいいんじゃないかなぁー?」

それぐらい自分で気づいてよ、と琴音は指をツボに深く食い込ませる。

「ぎゃはっ!わっ、分かっ…あはははは!謝る!あやまりゅからっ!」
「『謝ります』でしょ?」
「あぁあああっ!やはは……あや…まりっ……謝りますぅっ!!」
「よろしい」

脇腹へのくすぐりが少しだけ弱められた。
それを察して、他のメンバーも手の動きを穏やかなものにする。

「じゃあ、何て謝ってもらえばいいと思う?紅葉ちゃん」
「私っ!?」
「成績優秀な紅葉ちゃんの意見が聞きたいなぁ」
「えぇっと……『今まで皆さんの事をくすぐってきてごめんなさい』とか」
「はい駄目ー」

即座に駄目出しする琴音。

「さて、胡桃先輩だったら?」
「そうねぇ。『私は皆様のペットです。ご主人様、愚かな柚子をどうかお許し下さいませ』とかどうかしら」
「さすが宮間。それでいきましょう」
「…先輩ってそんなキャラでしたっけ」

鈴原姉妹が若干引いている。
宮間胡桃、優しさには定評があるが、ノリの良さにも定評のある少女である。

「そんなわけで姫ちゃん、謝罪の言葉をどうぞ」
「っ……」
「言わないの?」
「ふぐっ!?あはっ、い、言うっ!!」

躊躇していた柚子だが、脇腹を一揉みされるとあっさり観念した。
それ以上急かすまでもなく謝罪の言葉を口にし始める。

くすぐり姫の陥落 その12

「くく……あっ、やめっ……っ」

柚子の表情に、明らかな焦りの色が見える。
これまでとは違い、あからさまに笑いを堪えている顔だ。

(やばいやばい!何これ…!?)

我慢していても勝手に腹筋がびくびくと動いてしまう。
琴音はまだまだ本気ではなさそうだが、気を抜けば今すぐにでも笑い声を上げてしまいそうだ。

「そろそろ限界かしら?ほっぺが緩んできてるわよ」
「ひくっ…全……然…ぅんんん!!」

耳などへの責めが柚子の耐久力を削り取り、脇腹へのくすぐりがその隙を突いて柚子を笑わせにかかっていた。
強引に笑いを押し殺すと息がつまり、お腹が痛い。
琴音は薄いセーラー服越しに伝わってくる脇腹の感触を楽しみつつ、満面の笑みで柚子を見上げる。

「ま~だっかな~、姫ちゃんが初めてくすぐりで笑うとこ。皆でちゃんと見ててあげるからね」
「…ぁは……わ、笑わ、ないぃっ……!」

攻めに緩急をつけ、琴音は歯をくいしばって耐える柚子を弄ぶ。
肌の弾力を確認するかのように指先を深く食い込ませたり、そのまま指を小刻みに震わせたりもする。
柚子はその1つ1つの変化に敏感に反応し、5人を大いに楽しませた。

「琴音ちゃん、そろそろ本気でやっちゃっていいんじゃない?」
「ですね。もう無理みたいだし、ひと思いにやっちゃいますか」
「だ、誰が……くぷぷっ……ぅふ…うふふふっ…」

もはや頬は緩みきっており、口は笑みの形になっている。
笑い声をあげるのも時間の問題のように見えるが、琴音はここで最後のダメ押しを宣言した。

「楓ちゃん、紅葉ちゃん。とどめは皆で決めましょ?」
「「ふぇっ?」」
「何ぼーっとしてるの。やらないの?」

鈴原姉妹はすっかり柚子の乱れる姿に見蕩れていた。
揃って頬を染め、楓に至っては大きく息を荒げている。

「やりますとも!」
「えっと、私達はどこをくすぐれば…?」
「そりゃあこの引き締まったおみ足でしょうよ」

柚子の太股をぱしっと叩き、「ちょうど脚は2本あるしね」とウインクする琴音。

「なるほど…失礼しまーす」
「しまーす」
「ひ、ひひっ…ゃ…めっ……」

弱々しい制止の声にも大して遠慮した様子を見せず、2人は柚子の足首を掴む。
今の柚子は絶対的な力を持った姫ではなく、くすぐったさに翻弄されるただの少女に過ぎない。
上履きを脱がされると、白い靴下に包まれた足が露になった。

「「こちょこちょこちょ…」」
「ふうぅっ!!あ……はひっ……っふぐうぅぅ!!」
「おっとっと。皆、姫ちゃん落とさないように気をつけてね」

左右の足の裏をくすぐられると、柚子は椅子から跳びあがった。
背もたれの無い丸椅子に座っているので、胡桃が背中側から手で押さえてやらなければ転がり落ちていたかもしれない。
鈴原姉妹も慌てて足首を小脇に抱え、柚子の動きを制限する。

「そんなに暴れるとパンツ見えちゃうよ?まぁ、私にはさっきから見えてるんだけど」
「オレンジの縞々……」
「へぇ、意外と可愛いの穿いてるんだ」

足の裏への刺激に反応するたびに下着が覗いてしまうが、そんな事を気にしている余裕など無い、
両足の土踏まずを爪で攻撃されると、たまらないくすぐったさが柚子を苛む。
柚子の足指は、彼女の心情を代弁するかのように激しく悶えていた。

「うぅっ………ぐっ、くくく……」
「先輩、くすぐったそう…早く笑わないかなぁ」
「そんなに我慢したら体に良くないって。早く楽になっちゃいなよ」

左右の耳を蹂躙する2本の筆。
首筋をこしょこしょと這い回る翠の手。
背中を優しく撫でまわす胡桃の手。
脇腹をむにむにと揉みしだく琴音の手。
両足の裏をカリカリとひっかく鈴原姉妹の手。
それらが相乗的に効果を高めあい、柚子の心を折りにかかる。

「ふぐぐ……あうっ、ぐふふっ……!」

柚子の顔は真っ赤に染まり、涙どころか涎すら垂らしていた。
誰の目にも、あと一押しで忍耐の限界を超えてしまうように見える。
3年生の2人はそっと目配せすると、その「一押し」の為に柚子の耳から筆を引き抜いた。

くすぐり姫の陥落 その11

そんな後輩達の羨望と憧憬の眼差しを浴びつつ、胡桃はセーラー服の上から柚子の背中に優しく触れる。

「ほ~ら、さわさわ…」

肩から腰までにかけて、マッサージするように手のひらで撫で回す。
また、指先で背筋を下から上につつーっとなぞってみたりもする。
こちらも当然、柚子にくすぐられて自然と身についたやり方である。
攻める範囲が広いので、色々な触り方を試しているようだ。

「どう?ちょっとは笑いたくなってきた?」
「……どうでしょーね」

今までの自分のように「全くくすぐったくない」とはいかないが、やはり耳だけを徹底攻撃される方が辛いように思えた。
なので、ここは曖昧に答えて体へのくすぐりを継続させることにする。

「…ふぅ……んーっ……」
「やっぱり少しは効いてるよね。昨日までだったら本当に無反応だったし」
「とは言っても、そう簡単には笑ってもらえそうにないわねぇ」

柚子の思惑通り、3人は耳以外へのくすぐりにこだわり始めた。
確かにムズムズとしたくすぐったさは感じるが、これで笑わせられるということはないだろう。
このまま場のムードをグダグダにしてしまえば、きっと何かチャンスがあるはず…

「うーん…手強い。先輩、耳ももうちょっと強めに責めてみましょうか」
「「了解っ」」
「っ!?ちょっと待っ……ひゃふっ!!」

算段は一瞬にして崩れた。
琴音の言葉に応え、2人は右手の筆先を耳の穴に挿し入れる。

「や、駄目ですってっ……あうぅ……」

しばらく焦らされていたからだろうか。
筆が耳に出入りする感覚は、先ほどの小指とは比較にならなかった。
毛先の1本1本が耳の内壁にこすれ、体が反射的にぶるっと震えてしまう。

「…えろい」
「えりょっ……く……ないっ…」
「どう見てもR-18だけど」
「で、この状態でー」

耳への責めを手加減のないものにしたまま、琴音は再び顎をくすぐる。
翠と胡桃も、首筋と背中への攻撃を再開する。

「っ、くひっ……!」

ほんの少しだけ、柚子の頬が緩んだように見えた。

「お、くすぐったいのかな?もう笑っちゃう?」
「…誰が、こんなのでっ……」

まずい。非常にまずい。
顎や首筋、背中といった部位へのくすぐりだけではなかなか笑いには結びつかない。
それは一般的な少女達にしてもそうであるし、柚子なら尚更だ。
しかし、そのくすぐったさには耳への責めと同種の耐え難さがあった。
クーラーが効いているにも関わらず、柚子の全身に嫌な汗が噴き出してくる。

「くくく…いい顔になってきたじゃないの」

完全に悪役の台詞を吐く琴音。
彼女は右手で柚子の顎を掴み、しっかりと自分の方を向かせる。
柚子の顔は上気し、まるで風呂上りのようだ。

「いやー、最高の気分だわ。どう?
 『私はお耳をこちょこちょされて変な声を出しちゃう悪い子です』
 とでも言えば、少しは手加減してあげようかなーなんて…」
「言うか、この…変態っ!」
「……ほーう。言ってくれるじゃないの」

元より手加減してやる気などなかったが、この普段の自分のことを棚に上げた発言が決め手となった。
琴音はぱきぽきと指を鳴らすと、その手を柚子の胴に近づける。

「分かってるんだよ。くすぐったいけど笑わされはしないな、って思ってるんでしょ?」
「ぁふっ……まぁ、琴音たち程度のテクだったらそうかもね」
「強がっても無駄だよ。今から私がくすぐるのはー……ここだから」

そう言って、琴音は柚子の脇腹を軽くつついた。
すると、指一本の攻撃にも関わらず柚子の体が跳ね、腰が椅子から浮いた。

「ぅんっ!!」
「ここのくすぐり方は、身をもって学んできたからねぇ。毎日のようにくすぐってくれる誰かさんのせいで」

琴音の両手は柚子の腰のくびれのあたりを掴み、やわやわと揉み始める。

「っっ……!?ぁ……はうっ…!」

びくんっ、と柚子の背中が反った。
それもそのはず。
脇腹と言えば、人を笑わせるのに最も効果的な部位の1つだ。

くすぐり姫の陥落 その10

(本人の前でそこまで説明しちゃったら効果半減だし、察しのいい先輩達で助かりましたよ)
(甘く見ないでちょうだい。姫川だって普段ならこんなのひっかからないわよ)
(もう効果が出てきてるみたいだし、焦らずいきましょうね)

一流スポーツ選手もかくやという精度のアイコンタクトをこなす3人。
聡明な柚子がこうも容易く術中に嵌ったのは、主に耳への陰湿な責めのせいだ。
巧みな筆の動きに思考力を掻き乱されていたからこそ、誘導されるがままに顎のくすぐったさを認識してしまったのである。

「ほら姫ちゃん、きゃわいく笑ってごらーん」
「笑うわけないでしょ…勝手に盛り上がってるとこ、悪いけど……っ…キツいのは耳だけだから」
「なるほど。なら私達も遠慮はいらないわよね」
「えっ…?」

胡桃の方に目線を向けると、彼女は左手の指をわきわきと動かしていた。

「そろそろ筆を2本にしようと思ってたけど…」
「耳以外が本当に効いてないのか、自分の手で確かめてみるのも悪くはないかな?」

胡桃と同様に、フリーな左手を見せつける翠。
目の前で指をくねらせてやると、流石の柚子も表情を硬くした。
しかし、それでも柚子にしてみれば「耳を集中攻撃されるよりは…」というのが正直な気持ちであった。
自分のくすぐったさへの耐性は生来の体質であり、そう簡単に打ち破られるようなものではないはずだ。

「いいですよ。せいぜい頑張って下さい」

わざと煽るような口調で言ってやる。
これで耳以外へのくすぐりに集中してくれればこちらのペース。
場合によっては3人が満足するまで効いている演技をしてやるという手だって…
この窮地に至っても、柚子は策を巡らせる。

「余裕じゃない。じゃあ、私はやっぱりここかな」
「となると、私はここよね」

翠は柚子の首筋へ、胡桃は背中へと左手を伸ばす。

「ん……あぁ、そういうことですか」

一瞬どういうことかと考えた柚子だが、すぐに理解した。
翠と胡桃が触れてきたのは、それぞれ2人自身の最も弱い所だ。
自分で発見した弱点なのだから、柚子が忘れるはずもない。

「姫ちゃんほどじゃないけど、私達も結構上手いと思うわよ?」
「まぁ、会うたび会うたびくすぐられてるからね…」
「だって……ぅふ……2人とも学年違うし、会えたら触っておかないと勿体無いんで…」
「何その無駄なマメさは」

最後の突っ込みは琴音のものである。
巣栗女学園は大学までエスカレーター式な進学が可能であり、学年の枠を越えた授業や催しも多い。
とは言っても、わざわざ会おうとしない限りは他学年の生徒と会う頻度は限られている。

「姫川、肌綺麗だよねぇ」

翠は指先を小刻みに動かし、指先で首筋をこしょこしょとくすぐっている。
もちろん、いつも自分が柚子にやられているのと同じくすぐり方だ。
やや色白の肌はきめ細かく、触れていると嫉妬心すら生まれてしまう。
柚子が唾を飲み込むと、喉の動きが指先に伝わってくる。

「翠ちゃんだって綺麗じゃないの。スタイルだっていいし」

陸上部である翠はこんがりと日焼けしているが、肌が荒れているわけではない。
その夏らしい小麦色は、彼女のスポーティな容姿と相まって非常に健康的だ。
部内にも、彼女の走る姿に心を奪われる者が後を絶たない。

「スタイルいいってのは、宮間みたいのを言うのよ。その胸とか半分くらい分けてよ」
「あげられるならあげたいわよ…肩は凝るし、服も制限されるし」

女性の何割かを敵に回すような発言をする胡桃。
本人も認めるとおり、彼女の胸はかなり大きい。
まだ中学3年生だということも考慮に入れると、将来はどれほどのものになるか分からない。

「……ねぇ」
「……何も言わないで、分かってるから」

3年生の会話を聞きながら、お互いの肩を力なく叩き合う鈴原姉妹。
どう贔屓目に見ても、自分達があと2年でこの先輩達のような体型を手に入れられるとは思えない。
客観的に見て彼女らの愛らしさも十分に魅力的なのだが、隣の芝生は青く見えるものだ。

くすぐり姫の陥落 その9

「わざわざ目の前で見てやろうってこと?」
「んふふ。実は、ちょっといい事を思いついちゃってね」

明らかに良くない事を考えている顔である。
琴音は柚子の顔を見上げ、言葉を続けた。

「そうやってえろい反応してる姫ちゃんもいいんだけど、耳をくすぐって笑わせるってのは
 実際のところ難しいわけで」
「えろくない…っ」
「えろいじゃん」

筆の刺激に身を震わせる柚子の姿には、同性の胸すら高鳴らせるだけの艶があった。
鈴原姉妹など、床に正座してまばたきすら忘れて見入っている。

「で、私としてはやっぱり姫ちゃんをしっかり笑わせたいなぁと。皆もそうでしょ」
「…確かに」
「でも、耳しか効かないんじゃ結局無理なんじゃ?」

あくまで本来の趣旨は「柚子を笑わせること」だ。
いつも自分達がやられているように、くすぐりで大笑いさせてやりたいのである。
耳は確かに柚子の弱点であったが、今そこに与えられている刺激はどちらかと言えば官能的なもの。
くすぐったさと表現して間違ってはいないものの、笑いと結びつくかと言われれば微妙なところだ。
気恥ずかしさもあって敢えて口には出す者はいないが、それは誰もが気づいていることだろう。

「そこで私の出番ってわけですよ」
「……何するのよ」

緩慢な耳への責めを堪えつつ、なんとか毅然とした態度で問う柚子。

「こうするの」

琴音は膝立ちになり、両手でそっと柚子の耳元に触れる。
彼女の指先は意地悪く肌をなぞるが、柚子の反応は肩を僅かに跳ねさせる程度のものだ。
予想の範疇内ではあったので、この程度なら耐え切れない程ではない。

「先輩、それじゃ同じじゃ…」
「慌てない慌てない」

琴音は指先は頬をなぞり、顎を軽くくすぐる。
かと思えば耳へと舞い戻り、筆と協力して柚子を焦らす。

「何も変わってないじゃない。それで終わりなら…ぅんっ……つまんない思いつきね」
「ふーん。まだ気づいてないんだ」
「何が」
「効いてるの…耳だけ?」
「っ!?」

柚子ははっと息を飲んだ。
猫をあやすように、琴音の指は顎の下を優しくこちょこちょと刺激している。
その肌が粟立つ感覚は、耳から全身に広がるものと同質のものであった。

「あの、先輩?どういう事なんですか?」
「姫ちゃんは耳以外はどこをくすぐっても何も感じない。そうだよね?」
「はい」
「でも、くすぐったいって気持ちを知っちゃった今ならどうかな?」
「な……なるほど…!」

表向きはタイミング良く質問してきた紅葉への説明だが、実際には柚子本人に言い聞かせているようなものである。

「仮に耳以外は全然平気なままだとしても、例えば耳と一緒にくすぐってみたら……
 どうなのかな?」
「っ……!」

柚子は答えられなかった。
一度意識してしまってからは、顎への攻撃も無視はできないものになっている。

「あ、返事できないってことは図星だったんだよね?やっぱ耳に近いところからいくべきかなぁ」
「うるさいっ……!」
「姫ちゃん、顎もくすぐったくなっちゃったのね。
 じゃあ、もうすぐ首とかも弱くなっちゃうのかしら?」
「時間かけてあげれば、全身くすぐったくできるかもね」
「なりませんから!勝手なことばかり……ぅんっ…!」

言葉で柚子を追い込みにかかる3人。
弱点の耳と一緒にくすぐったからといって他の場所もくすぐったく感じるかなど分からない。
しかし、柚子にそう思い込ませることさえできればしめたものだ。
彼女は既に「くすぐったさ」というものを知っている。
あとは上手く暗示にかけてしまえば、耳以外の場所でその感覚を味わわせるのも可能かもしれない。
これが琴音の思いついた「ちょっといい事」であった。

くすぐり姫の陥落 その8

両目に涙すら浮かべながらの懇願。
しかし、少なくとも同級生・上級生の3人に対しては逆効果であった。

「くすぐりで学園を支配下においていた美少女、その名は姫川柚子。彼女の唯一の弱点は、なんと耳でした」
「そんな彼女が、初めて味わうもどかしい感覚に涙目で許しを請うている……つまり?」
「これは『もっと虐めて下さい』と意訳するのが正解よね」
「この悪魔どもー!!」

柚子を知らない者が見れば、思わず許してしまっていただろう。
彼女のしおらしい姿にはそれだけの力があった。
しかし、今まで柚子にさんざんくすぐられてきた3人にしてみれば、それも加虐心をそそるスパイスでしかない。

「よし、そろそろ選手交代しよっか」

1年生の2人は、もっとやっていいと言っても自制心が働いてしまうだろう。
それに、出番を待ちわびている3年生達をこれ以上焦らすのも良くない。

「2人とも、どうだった?」
「正直言って、その、最高でした」
「今日ここに来て良かったです。ほんとはもっと触ってたいぐらいですし」

満ち足りてはいるのに、まだまだ触り足りない。
鈴原姉妹は未だに柚子の耳をちらちらと見ていた。
柚子はその視線に気づくと、乱れた髪を整えて耳を隠す。

「楓ちゃん、紅葉ちゃん。今日のことはよーく覚えておくからね。そっちも忘れないでね?」
「ひぇっ…!」
「好きなだけやっていいって言ったじゃないですかぁ…」

怒らないとはいったが、恨み言の1つぐらいは出てしまう。
柚子に明らかな作り笑いを向けられ、2人は慌てて翠と胡桃の背後へと隠れた。

「かわいそうに…よしよし」

3年生の腰にしがみつく双子の頭を撫でる琴音。

「大丈夫、あのくすぐり魔は私達がやっつけちゃうからねー。ゆっくり見学してて」
「やっつけるだなんて物騒な。虐めじゃないんだから、泣かせちゃ駄目よ?」
「…宮間、そんなの持ちながら言っても説得力無いからね」

手加減するような事を言っている胡桃だが、その両手には何本もの筆が握られていた。
琴音が用意していた筆はかなりの本数があり、太さや毛の長さも様々だ。

「ささ、翠先輩もどうぞ」
「ありがと。私はこの辺のを使おうかなぁ」

使い勝手の良さそうな1本を手にすると、翠は柚子の左に、胡桃は右に腰掛ける。

「……お手柔らかにお願いしますよ?」
「どうかなぁ。今まで姫川がやってきたくすぐり位には手加減しようかな」
「私は優しくしてあげるから、安心してね」

2人は柚子の髪を掻き分け、右手に持った細い筆を耳へと近づけていく。

さわ……

「ぅ……ふ…」

つつーっ…

翠の持った筆の先端が、僅かに耳たぶに触れた。
胡桃の筆は、耳の外周のラインを触れるか触れないかのタッチでなぞる。

ちょんちょん……ススッ……こちょこちょ…

決して強い攻撃は行わず、ごく緩やかな刺激を耳に与える。
これはもちろん情けをかけているわけではなく、たっぷりと時間をかけて虐めようという気持ちの表れだ。

(流石は胡桃、分かってるじゃないの)
(いきなり激しくだなんて無粋な真似はしないわよ)

アイコンタクトでお互いを称えあう2人。
さばさばとした翠とほんわかとした胡桃は、正反対のタイプだが幼い頃からの親友だ。
言葉を交わさなくともコンビネーションは完璧である。

「もうっ……やるんだったら、もっとさっさと思いっきりやったらどうですか?意地が悪い…!」
「焦らないの。時間はたっぷりあるんだから、のんびりやらせてよ」
「そうそう。美味しい素材は丁寧に料理しないとね」

産毛を掠めるような筆の動きは、むずむずとして何とももどかしい。
強烈さはないが決して無視はできず、柚子は落ち着かずに思わず身を揺する。

「トイレ我慢してるみたいだよ」
「うるさいっ……で、琴音はそこで何してるわけ?」

膝をもじもじ摺り合せつつ問いかける。
琴音は耳への責めには参加せずに、先ほどから柚子の足元に腰を下ろしているのである。

くすぐり姫の陥落 その7

「んふっ……」

柚子の頬が少しだけ緩む。
くすぐったさは穏やかだが、後輩に弱点を間近で見られる気恥ずかしさは大きい。
耳たぶを優しく揉まれる感覚は、どちらかと言えばくすぐりよりマッサージに近い気がする。
そういえば耳とか足の裏には色んなツボがあるんだっけかなぁ…と、柚子は場違いな豆知識を思い出していた。
紅葉の爪が耳たぶの産毛を掠めると、その瞬間は少し体が反応してしまう。

「痛かったりしたら言って下さいね」
「うん…それは大丈夫……ふふっ」

最初は非常に優しかったくすぐりも、少しずつ我慢が必要なものになってくる。
楓の指先は、琴音が発見した弱点――耳の裏側の付け根の辺りで細かく動いている。

「っ…楓ちゃん、わりと遠慮ないのね……」
「ご、ごめんなさいっ!でも、さっきの先輩の顔が可愛かったから…」

楓だけは、琴音に耳を責められていた柚子の顔をしっかりと見ている。
その時の表情を再び目にしたいという思いが、彼女の攻めを積極的にしていたのだ。
紅葉のくすぐりも、姉に追随するようにだんだんと強さを増していく。

(うぅっ、結構やばくなってきたかも…!)

反射的に顔を両手で覆ってしまいそうになるが、それは琴音に禁じられている。
柚子は膝の上で両手を握り締め、目をきつく閉じて耐える。

「こちょこちょこちょ…」
「ぁふ…やっ、くすぐった…」
「こちょこちょ…えいっ」
「きゃふっ!?」

右耳の内側を刺激していた楓の小指が、穴の中へと挿しこまれた。
数分前と同じ電流が体を貫く。

「私も、失礼します」
「……っ!!」

左耳の穴にも紅葉の小指が入ってくる。
覚悟はしていても、やはりその刺激は堪えがたい。
閉じていたはずの目は完全に見開き、食い入るように自分の顔を見つめる3人が視界に入ってくる。

「ぐうっ…」

自分の情けない顔が見られている。
否応なしにそれが自覚され、様々な感情がこみ上げてきた。
明日には琴音にだけでもくすぐりのフルコースを味わわせてやる…耳も、耳も徹底的に虐めてやる…!
そんな決心で自身を奮い立たせるが、ちくちく刺さる視線は柚子の精神力を確実に消耗させていく。

「んんっ!」

つぷっ…と、小指の先が耳のより深くへと到達した。
耳の形状的に、いくら細い指でもこれ以上奧には入らない。
そんな僅か数ミリの動きが、柚子の神経をこの上なく苛む。

もぞ……もぞ…

両耳に挿しこまれた指がゆっくりと蠢く。
指の腹や爪が耳の内壁とこすれ、柚子の頭にボソボソという音を響かせる。
外からでは何が起きているかほとんど分からないが、柚子の表情は面白いように変わった。
左右から指で挟みこまれているため、どちらかに首をすくめて逃れることもできない。

「怪我しちゃ大変ですから、動いちゃ駄目ですからね…」
「先輩、首にすっごい鳥肌立ってますよ。ぞわぞわします?」

首どころか、背中や太股まで鳥肌だらけになっている。
耳の中を蹂躙される感覚は、まるで脳を直接かき回されているような錯覚すら引き起こしていた。
耳から頭の中へと電流が流し込まれ、その電流が脳で増幅されて体中を駆け巡っているかのようだ。

耳責め
挿絵:ブロッサムさん

「や…め……おかしくなるっ……」

これを続けられたら、自分がどうなってしまうのか分からない。
柚子は恐怖心すら覚えて制止を訴える。
すっかり彼女の耳を責めるのに熱中していた2人は、それを聞いて慌てて耳から指を引き抜いた。

「…んっ」
「ご、ごめんなさい!」
「やり過ぎちゃいました!?」

小指が耳から抜かれる刺激も決して弱くは無かったが、柚子は責めから解放されてほっと一息つくことができた。
素直に願いを聞き届けてくれた後輩に感謝しつつ、柚子は乱れた呼吸を整える。

「あの、さ…もう終わりにしよう?私の耳、普通じゃないみたいだから…ね?」

くすぐり姫の陥落 その6

四肢の拘束が解かれると、柚子はようやく体の自由を取り戻すことができた。
全身に無駄に力が入ってしまっていたので肩や腰が少し凝っている気がする。
上履きを履いてゆっくり立ち上がり、スカートについた埃をパンパンと払う。

「で、どうするつもり?」

柚子にきっと睨みつけられた5人だが、それに萎縮したのは鈴原姉妹だけ。
対等どころか今に限っては圧倒的に有利な立場であるのだから、脅える必要などないのだ。

「どうする…って、どうするのかしらね」
「ここは私にお任せを」

びしっと挙手する琴音。実は学級委員に立候補するほどの仕切りたがり屋である。

「姫ちゃんはこの椅子に座る。縛ったりしないけど、顔は隠しちゃ駄目だよ」
「はいはい」

どうせ拒否権などない。
柚子が差し出された丸椅子に素直に腰掛けると、琴音はその左右にも1つずつ椅子を設置する。

「耳は2つしかありませんから、2人ずつやりましょう」
「ふむ」
「最初は紅葉ちゃんと楓ちゃんで」
「えー!?」
「「えっ!?」」

翠が不満の声を、鈴原姉妹が驚きの声を上げる。

「唯崎、ここは先輩からっていうのが筋じゃないの?」
「まぁまぁまぁ。安心して下さいよ、美味しいところは残しておきますから…」
「本当でしょうね?」
「保障しますよ」

いまいち信用しきれないが、しぶしぶ引き下がる翠。
そもそも柚子の弱点を看破したのは琴音の功績であるので、それを考えるとあまり強くは出れない。

「で?そっちは何か問題あるの?」
「問題あるっていうか…ねぇ?」
「うん。流石に畏れ多いというか…」

相手は先輩、それもある意味では学園の頂点に君臨する柚子だ。
1年生の2人の気が引けてしまうのも無理はなかった。

「遠慮することないって。弱点を知ってるってことは、仕返しなんてされないんだから」
「「でも…」」

声を揃えて尻込みする双子を見て、琴音は意地悪な解決策を思いついた。

「…そっか。じゃあ、やめとこっか」
「へ?」
「やめ…?」
「姫ちゃんの耳をくすぐりたくないって言うなら、無理にやらせるわけにはいかないもんね。
 ごめんね、2人の気持ちを考えてなかったわ」

そう言ってわざとらしく頭を垂れると、2人は慌てて弁解する。

「ま、待って下さい!やりたいです!」
「私も!やらせて下さい!」

楓も紅葉も、こんな貴重な機会を見逃したくはない。
年下から見ても柚子は可愛らしくて魅力的なのだ。
そんな憧れの先輩を合意の上で好き勝手にできるチャンスなど、次はいつ訪れるか分からない。
永遠に訪れないかもしれない。

「よく言えました。やっぱり、やるなら自分の意思じゃないとね」

琴音は2人の背中をぽんと叩くと、柚子の左右へと押し出した。

「頑張ってねー。私達はじっくり見学させてもらうから」
「頑張れって言われても……っ!」

柚子と目が合うと、紅葉は思わず身を竦ませる。

「そんな脅えなくていいって。今まで私がみんなをくすぐってきたのは事実なんだし、怒ったりしないよ」
「先輩…」
「楓ちゃんもね。たかが耳ぐらい好きなだけくすぐればいいじゃない」
「…はい」

姫やら女帝やらと呼ばれてはいるが、柚子は基本的には人がいい方だ。
小動物系の鈴原姉妹に脅えられてしまうと、これから自分をくすぐる相手と分かっていても、ついつい優しい言葉をかけてしまう。
琴音はその辺りのことまで計算して2人をけしかけたのだが、柚子はそこまでは気付いていない。

「きゃわいい後輩が警戒心と体を解きほぐし、その後にサドい先輩方が変態的にねちっこく責める…
 我ながら完璧なシナリオだわ」
「琴音ちゃん、失礼な部分も含めて声に出てるわよ」
「おっと」

口元を押さえ、琴音は鑑賞に集中する。

「それじゃ、触りますね」

2人は意を決して柚子の左右の椅子に座った。
紅葉は躊躇いがちに手を伸ばし、右の耳たぶをつまんでみる。
親指と人差し指で前後から挟みこんでみると、そこはぷにぷにと柔らかい。
楓は妹よりやや大胆に、左耳の裏側を指先で刺激してみた。

くすぐり姫の陥落 その5

見るなと言われても、目が離せない。離そうという気も起きない。
むしろ、一瞬ごとの柚子の表情の変化を見逃すまいと余計に注視してしまう。

「お次はこっちを」
「ひうっ!」

琴音の指は耳の内側へと侵攻していく。
綺麗に手入れされた爪は、上からではよく見えないようなところにまで容赦なく潜り込んでいった。
柚子は地味ながら抗いがたいくすぐったさに翻弄されながらも、みっともない声など上げてやるものかと息を押し殺す。

「っ……ふーっ…!」
「盛り上がってるとこ悪いけど、どんな感じなのかしら?」
「うん、こっちからだと全然見えないんだよね」

足を押さえる2人からは、柚子の顔はほとんど見えない。
体の震えは足まで伝わってくるが、流石にそれだけでは物足りない。

「まぁ、どんな感じかって言いますと…」
「…っ……ゃうっ!」
「耳の裏側だと、付け根のあたりが弱いみたいですよ。
 この辺を触れるか触れないかぐらいでこちょこちょーってすると効いてますね」
「…琴音っ!絶対、絶対すんごいお仕置きしてやぅんっ!?」
「うへへ。その反応だと、内側だったら穴に近い方がダメなのかな?」

弱点の中でも特に弱い急所を探すという行為。
それは柚子にとってのライフワークである。
例えば、先ほど琴音が突かれたポイントも、柚子が小学5年生の時に見つけ出した脇腹の急所。
そんな柚子にしてみれば、自分の弱点を暴露されるというのは最上級の辱めだ。

「さて。まだ全然堪えてないみたいだし、そろそろ…」
「好きにしなさい。明日には天国と地獄をセットでプレゼントしてあげる」
「へぇ、そうですか」

どの指にするか少し迷ったが、ここは一番細い小指が最適だろう。
左手で柚子の頭を固定すると、琴音は右手の小指を耳の穴へと挿し入れた。

「ひぁっ――!?」

ぞくん!!と柚子の体が一際大きく震えた。
物理的には琴音の指はミリ単位でしか耳に侵入していないはずだ。
それなのに、頭のてっぺんからつま先にまで電流が通り抜けた。

「ぅあ……や、抜いて…!」
「はいよ」
「っ!」

指を引き抜かれた時に、再び身震いしてしまう。

「あら、脚まで鳥肌立っちゃって。私達の弱いところよりも敏感だったりするのかしら…」
「ありえなくもないんじゃないの?私だって、触られただけじゃこんなにならないよ」

胡桃の指摘通り、スカートから伸びる脚にまで鳥肌が立っている。
健康的な太股にうっすらと浮かんだ汗が妙に艶かしい。

「あ、そうだ。姫ちゃんは耳が弱いってこと…みんなが知ったらどう思うかなぁ」
「なっ!?」

流石に柚子の顔色が変わった。
無理やり顔を琴音の方へと向けると、彼女はにやにやといやらしい笑みを浮かべている。

「席が近い子なんて、授業中にだって触ってくるんじゃないかな?」
「休み時間は別の学年だって黙ってないでしょうね」
「私とかね」
「初等部の子に捕まってくすぐられる姫川先輩…見てみたいかも」
「楓、それはちょっと変態入ってるよ」

どれもこれも、ありえないとは言い切れない。
目についた可愛い子は思うがままにくすぐってきたのだから、被害者の人数はとても数え切れない。
柚子にくすぐりが通じると広まれば、どれだけの人数が復讐に押し寄せるだろうか。
想像するだけで背中に冷たい汗が噴きだす。

「駄目、絶対それだけは駄目っ!」
「バラさないで欲しい?お耳が敏感な姫ちゃん」
「……うん」

ここで軽口を叩けるほどの度胸は無い。

「だったら暴れないでね」

琴音はそう言って立ち上がった。

「よし、みんなももう押さえてなくてOK。紅葉ちゃんと先輩達も、顔見れないと嫌でしょう」
「なるほど…ね」

バラさない代わりに今日は自由に責めさせろ、ということらしい。
もちろん柚子にそれを拒否できるはずがない。

くすぐり姫の陥落 その4

「じゃ、強行突破で」

柚子は右手の人差し指を立てると、琴音の脇腹を軽く突く。

「あうんっ!?」

思わぬ不意打ちに、琴音の体がくの字に曲がった。
柚子はその機を逃さず、同じ部分を連続でちょんちょんと刺激する。

「くくっ……ダメダメ、そこ弱いってば…」
「じゃあ降りればいいでしょ」

つんっ!と強めに脇腹の急所を貫かれ、琴音がたまらず柚子の上から転がり落ちた。
片方の脇腹だけを攻撃してバランスを崩し、追加の強烈な一撃で倒す……経験豊富な柚子だから可能な妙技である。

「ちょっ、降りちゃったら…!」
「起き上がれちゃいますよね」

上体を起こした柚子は、続いて翠の首筋をこしょこしょと優しくくすぐる。

「あふ……やっ、首は……!」

亀のように首をすくめる翠。
強気な彼女が弱点を責められるととたんに大人しくなってしまうのが、柚子にとってはたまらなく愛おしい。
もっとも、今はそんな姿をゆっくり眺めている余裕は無いのだが。

(あとは胡桃先輩を無力化すれば!)

両足に跨った2人の拘束を緩め、一度強引にでも立ち上がってしまえばどうにでもなる。
手を前に突き出すだけで、自分の間合いには誰も踏み込めないのだから。
柚子は十分な勝算を持って胡桃の弱点である背中へと右手を伸ばした。
――が、しかし。

「……ひゃんっ!?」

甲高い悲鳴は、柚子の口からあがった。
見れば、胡桃の指先が柚子の耳たぶをそっとつまんでいる。

「危なかったわ…姫ちゃんに先にくすぐられたらおしまいだもの」

柚子の電光石火の早業といえど、相手が多過ぎた。
弱点が「背中」という正面から触りにくい部位であったことも幸いし、胡桃は先に相手の弱点に触れることができたのだ。
胡桃は耳たぶをつまんだまま、指先でカリカリと皮膚をひっかいてみる。

「うーん、耳ってそんなに効くものかしらね?」
「っく……やめて下さいっ…!」

くすぐりと言っていいのか微妙なほど軽いタッチにもかかわらず、柚子は力なく琴音の手を掴むことしか出来ないでいた。
実際のところ、柚子が感じている刺激は大したものではない。
ただし「くすぐったさ」という感覚自体に不慣れであるが故に、その些細な刺激すら脳が大袈裟に解釈してしまうのだ。

「はい、ぱたーん」

肩を押され、再び仰向けに倒れてしまう。
しまったと思う間もなく、一年生の2人が両腕をしっかりと押さえ込む。

「そうそう。先輩だからなんて手加減しないで、全力で捕まえといてね」

無様に転げ落ちた自分の事は棚に揚げておいて、琴音が再び柚子の腰に跨る。
琴音は柚子の顔を横に向けて、右耳を上にもってきた。

「それじゃ、こっちの耳から」

まずは挨拶代わりに、耳の裏側をこちょこちょとくすぐってみる。

「っ~~~~!」

声無き声と共に柚子の体が跳ねるが、5人の体を跳ね飛ばせるはずもない。
琴音の指先は、なるべく反応の良いところを見つけてやろうと上下左右に歩き回る。

「無理無理無理っ、ぞわってする!ほんとに勘弁して!」
「するわけないでしょー。何年分のお返しだと思ってるの?」

全身が弱点とも言っていい琴音は、柚子にとって正に理想のおもちゃだ。
幼少の頃から今に至るまで、柚子が琴音を一週間くすぐらなかったことなど無かったかもしれない。
要は、お返ししてやりたいという気持ちは彼女こそが一番強いのだ。

「どう?ちょっとは今までのことを反省してる?って、してるわけないか」
「あ、後で覚えて……ぅううっ!」

ろくに憎まれ口すら叩くことができない。
耳から生まれるぞくぞくとしたもどかしさが頭を貫き、背筋の方へと広がっていくのだ。
頭を横に向けられているため、その表情は楓だけが見ることができる。

「(なんか、ものすっごく可愛いんですけど…!?)」

頬を紅潮させ、涙目で耳への攻撃に耐える柚子。
それを見ているのは自分だけだという意識が、楓に何か禁忌に触れているかのような興奮をもたらしていた。
後輩に顔を覗きこまれていることに気づくと、柚子の顔は更に赤く染まる。

「楓ちゃん、わざわざ見なくていい…っていうか、見ないで…」

くすぐり姫の陥落 その3

「えっ」

そう呟いたのは柚子自身であった。
ただ触られただけで反射的に体が動いてしまうことなど、今までにあっただろうか。
しかも、不意打ちですらなく、本当に真正面からただ触られただけだ。

「……?」

触った琴音の方も、軽く困惑していた。
動きが小さ過ぎてあとの4人は気づいていないようだが、琴音は柚子の反応を見逃さなかった。
だが、今までの経験が彼女に「やっぱ気のせい?」「演技じゃないの?」といった疑念を抱かせる。

「琴音先輩、どうかしたんですか?」
「ちょっと静かにして」

琴音は深呼吸をして心を落ち着けると、思わず遠ざけてしまった指を再び耳に近づけていく。
今度は両手の中指で、耳の外周のラインをそっとなぞってみる。

「っ……!」

びくん!
今度は軽く体が跳ねた。

「えっ…先輩、今ビクッってしましたよね?」
「絶対動いた!まさか……」
「やっぱり、本当は耳が弱い!?」

俄かに盛り上がる委員会メンバーに否定の声すら上げず、柚子は呆然としていた。

(何、今の感じ…!?)

彼女は嘘などついていなかった。
自分の耳が弱いだなんて思っていなかったし、そもそも他人に触られた覚えもないのだから。
それなのに、そこに琴音の指先が触れただけで未知の感覚が生まれた。

「あぁ。そっかそっか、そういうことね」

柚子のどうみても演技ではない困惑の表情を見て、琴音は事態を理解した。

「姫ちゃん、やっぱり耳が弱かったんだ。 ただ、今まで誰にも触られなかったから気づかなかったってだけで」

そう。
常にくすぐる側であり、たまに逆襲されようと意にも介さない。
腋や脇腹を徹底的にくすぐられても平気な彼女に対して、わざわざ耳を攻めてみようと思う者など誰もいなかったのだ。

「な、なるほど…」
「確かに筋は通ってるよね。まさか耳だけ弱いだなんて思わなかったし」
「じゃあ、今日はもしかして私達の初勝……わっ!?」
「あっ!?」

鈴原姉妹が悲鳴を上げた。
柚子が両腕に力を入れ、強引に2人の拘束を破っためである。
彼女はそのまま起き上がろうとマットに両手をつくが、そこまで上手くはいかなかった。
何気にスポーツも万能な彼女と言えど、同世代の3人を一息に退かせることなどできはしない。

「くっ…!」
「逃がさないよー。今日は記念すべき初勝利の日になるんだから」

にやりと笑う翠。
メンバーの中でもかなり本気で柚子への復讐心を燃え上がらせていた彼女にとって、この機会はまたとないチャンスだ。
今日見逃してしまったら、柚子はもう委員会の呼び出しに応じなくなってしまうかもしれない。

「はぁ…分かりましたよ、認めますって。
 今まで意識してませんでしたけど、確かに私は…その……」
「うん、姫ちゃんは?」

口ごもる柚子に、優しく先を促す胡桃。
常に穏やかで友人からの信頼も厚い彼女であるが、根はかなりサディスト寄りである。

「私は、まぁ……耳が…ちょっと弱いみたい、です」

そう言いおわった柚子の顔は真っ赤に染まっていた。
物心ついてからくすぐり耐性に絶対の自信も持っていた彼女にとって、この宣言は悔しく、それ以上に恥ずかしいことである。

「そんなわけで、今回は素直にギブアップしますよ。私の負けです」
「ふむ」
「……いや琴音ちゃん、『ふむ』じゃなくて。勝負はついたんだから、そろそろ退いてってば」
「いやいやいや」

やれやれと両手を広げる琴音。

「ギブアップとか無いから。最初に『泣いて謝っても駄目』って言ったよね?」
「そうそう、勝ち負けなんてオマケなんだから。私達は姫川がくすぐられて笑うところがみたいの」
「負けでいいからもうくすぐらないで、なんて通じないですよねー。先輩、今までやめてって言われて素直にやめたことありますか?」
「うぅっ…!」

うやむやの内に場を収めようと試みたのだが、誤魔化せなかった。
だが、まだ万策尽きたわけではない。

くすぐり姫の陥落 その2

ほぉー…?
期待が2割、「どうせまた返り討ちなんだろうな」という気持ちが8割といった声が挙がる。

「ズバリ、あの子は耳が弱い!」

おおおおぉ!?
今度は大いに感情のこもった歓声が上がった。

「え、マジでですか!?」
「それが確かなら、今回こそは本当に勝てちゃうんじゃない?」
「いやいや!まずはその情報の信憑性ですよ!」
「ふふふ、落ち着きたまえよ皆の衆」

興奮を抑えきれない様子の4人をなだめ、琴音は話を続ける。

「こないだね、姫ちゃんの髪についてた埃をとってあげたのよ」
「ふんふん」
「で、上手くつまめなくて、ちょっと姫ちゃんの耳に指先が触れちゃったわけ」
「ほうほう」
「そしたら、あの姫ちゃんの肩が『ぴくんっ!』って跳ねたのよ!」
「おぉ、それで?」
「いや、それで終わり」
「は?」

4人の視線が急激に冷ややかなものになった。

「え?偶然姫川先輩の耳に触ったら、肩が跳ねて?」
「うん」
「だから耳が弱点です、そこを攻めれば勝てます、と?」
「はい」
「……はぁ」

3年生の綾瀬翠が、これ以上はないといった呆れた眼差しで琴音を見る。
他のメンバーも1分前が嘘のようなテンションの下がり様だ。

「人がかなり期待して聞いてみれば、そんなあやふやな根拠で…」
「いやいやいや。あの子の幼馴染の私の感覚を信じて下さいよー」
「うーん、でもねぇ…」
「可愛い後輩達の前でくすぐり倒されてクールビューティーのイメージが崩れてしまった翠先輩ですから、必要以上に慎重になるのも分かりますけど」
「説明台詞をありがとう、殴っちゃおうかしら」
「ごめんなさい」

手芸部副部長の琴音が陸上部部長の翠に殴られたらひとたまりもない。
ちなみに、翠はその「くすぐり倒された」一件がきっかけで部の後輩達と打ち解けることになったのだが、それはまた別の話である。

「まぁまぁ、いいんじゃないの?今回は琴音ちゃんの言うとおり、耳を攻めてみるってことで」

割と本気で怯えている琴音を見かねてか、宮間胡桃が助け舟を出す。
この場にいる3年生は翠と胡桃だけなので、翠を止めるなら彼女しかいないのだ。
あとの2人は1年生の鈴原楓と鈴原紅葉。ポニーテールの双子の姉妹である。

「楓ちゃんと紅葉ちゃんも、それでいい?」
「はいー」
「いいですよー」

あまり乗り気でなかった翠も、他のメンバー全員がやる気となれば敢えて逆らう理由はない。
むしろ、やると決まれば気合を入れて臨むタイプだ。

「…よし。ちょっと信憑性には乏しいけど、唯崎の案でいってみましょう!まずは道具の準備から?」
「いえいえ、既に色々用意してありますって」

琴音は鞄から絵筆、耳かきといった「武器」を取り出してみせる。

「あら素敵。この筆なんてとってもいい感じ」

いかにもお嬢様といった顔立ちの胡桃が絵筆を持つと、それだけで非常に様になる。
彼女は実際に美術部の部長であるので、当然と言えば当然かもしれない。

「へぇ、唯崎にしては準備が早いじゃない」
「はははっ、今日使うんだから今日持ってこないと意味無いでしょう」
「あぁ、なるほど……えっ?」

琴音以外のメンバーに一気に緊張が走る。
いつもなら、作戦を決めてから実行までは数日の間がある。
道具の調達や各自の予定調整をしなくてはならないし、それ以上に心の準備というものが必要だからだ。
なにしろ、負け=くすぐり地獄なのだから。

「『今日使うんだから』?」
「姫ちゃん、あと5分ぐらいでこの教室に来ますよ。私が呼びましたからね」
「正真正銘のお馬鹿ー!」

翠が琴音の肩を掴み、残像が残るほどの勢いで前後に揺さぶる。

「だーいじょうぶですって先輩。勝てるんですから、善は急げってやつですよ」

揺さぶられながらも器用にウインクしてみせる琴音。

「無理無理…こうなったら、この馬鹿を生贄にささげて逃げるしか…」
「翠ちゃん、落ち着いて!あと5分で姫ちゃんが来ちゃうなら、その間に少しでも作戦を―」

ガラッ、とドアが開いた。

「やっほ」

そこにいたのは姫川柚子その人である。
柚子は教室に足を踏み入れ、対策委員会のメンバーを見回す。

「おーおー、今回も中々素晴らしい面子だこと」
「……5分早いんじゃないの?」
「5分前行動は優等生の基本でしょ」

そう言って、最も入り口付近に座っていた翠の肩に触れる柚子。
そして首筋から顎にかけてゆっくりと指を滑らせると、そこから翠の全身にぞくっと甘い痺れが広がっていく。

「ふぁ……っ、やめなさいっ!」

一撫でされただけで陥落しかかった体を叱咤し、席を立って柚子から距離をとる翠。
他のメンバーもとうに立ち上がり、窓際へと避難していた。
これは柚子にくすぐられた経験による本能的な行動と言っていいだろう。
彼女の指はそれだけ危険な凶器であり、抗いがたい麻薬でもあるのだから。

「翠先輩、相変わらず首が弱いんですねー」
「っ…!」

思わず赤面する翠を見て、柚子はくすっと笑う。

「そういえば、胡桃先輩の背中も最近触ってないなぁ」
「うーん、できれば今日も勘弁願いたいわ…」

柚子と視線が合い、身を強張らせる胡桃。

「そっちの双子ちゃんには、まだ挨拶ぐらいしかしてないよね。どこが弱いのかな?」
「ど、どこも普通ですよぉ…!」
「そうそう…って紅葉、私の後ろに隠れないでよ!」

こちょこちょと蠢く指を見せつけられ、双子は揃って身を震わせる。

「琴音ちゃんはいつもくすぐってるけど、全然飽きがこないんだよねー。赤ちゃんの肌触りというか何というか」
「それはそれは、光栄だわ」

内心だいぶビビりながらも、呑まれまいと強気な態度を見せる琴音。

「悪いけど、今日は姫ちゃんが笑い転げる番だよ。もう弱点は見破ってるんだから」
「へー、じゃあやってみて貰おうかな。早く用意しちゃってよ」

そう微笑む表情に焦りの色は無い。

「(本当に耳が弱点なの?あの子、全然動じてないけど!?)」
「(大丈夫ですって!あれ強がりですって!)」
「(うわぁ……耳が効かなかったら、私達…)」

小声で話しつつ机を移動させ、マットの準備をする5人。
柚子はくすぐりを全く恐れていない為、毎回抵抗もせず素直にくすぐられてくれる。
逃げもしないし無理矢理拘束する必要もないので、本人を目の前にして堂々と舞台作りができるのであった。
床にできたスペースに体育倉庫から拝借してきたマットを広げ、そこに手際よくレジャーシートを敷く。
ちなみ、レジャーシートもロッカーの中に勝手に保管している。

「今日こそは思いっきり笑わされちゃうんだろうなー。どうしよう、怖いなー」

柚子を笑わせることができなければ、5人は後日に1人ずつ柚子の手により報いを受けることになる。
それが柚子と対策委員会の間に交わされた数少ないルールの1つだ。
どのような順番で復讐されるかも分からないので、襲われるまでの数日間は心が休まる暇もない。

「準備完了…と。姫ちゃん」
「はいはい」

柚子は上履きを脱ぐと、余裕綽々にマットに転がる。
大の字になった彼女の右足には翠、左足には翠が跨る。
楓と紅葉はそれぞれ左右の手首を遠慮がちに押さえた。
そして、琴音は両手の骨を鳴らしながら柚子の腰に跨る。

「さて姫ちゃん。一応言っておくけど、泣いて謝っても駄目だからね」
「怖い怖い。今回はどこをくすぐられちゃうのかな?」

普通にくすぐっても効かないことはよく分かっているのだから、焦らしても意味がない。
琴音は柚子のセミロングの黒髪をかき分け、彼女の耳を露出させる。

「姫ちゃんの弱点の可愛いお耳、徹底的にいじめてあげるよ」

その言葉を聞き、柚子は顔色を変え……たりはしなかった。

「は?」
「『は?』って…耳が弱点なんでしょ?弱点だよね?」
「いや、耳ってそんな敏感な場所じゃないでしょ。たまーに超弱い子もいるけど」

「(ハズレだったー!!)」

嘘をついているようには見えない。
5人の額にどっと冷や汗が浮かぶ。
柚子のくすぐりは天国を味わわせてくれるが、同時に地獄だって見せられるのだ。
いざくすぐられてしまってからはともかく、くすぐられるまでは勿論怖い。

「唯崎、どうするの!?完全に勘違いだったじゃない!」
「うぅ…どうしましょうね、マジで」
「とりあえず、適当にくすぐってみるしかないですよねぇ…」

相手は根本的にくすぐりが通じない柚子だ。
新しいアイデアも無く攻撃してみてもやるだけ無駄なのである。

「まぁまぁ、そうがっかりしないで。耳でも何でも試すだけ試してみればいいじゃない」

5人のあまりの落胆ぶりに、逆に柚子に気を遣われてしまう。

「うん…じゃあ耳をくすぐってみて、駄目だったら今回も負けってことで…」

発案者の琴音は、もはやお通夜のようなテンションの低さだ。
義務的で緩慢な動きで、剥き出しになった左耳に右手を伸ばす。
そして琴音の人差し指が軽く耳たぶに触れた瞬間――
ぴくっ、と柚子の体が震えた。

くすぐり姫の陥落 その1

私立巣栗女学院中等部2年には、「姫」と呼ばれる生徒がいる。
と言っても大げさな話ではない。
理由の1つは、少女の苗字が姫川であること。
もう1つは…

「ぁははっ!?ちょっ、姫ちゃん、今両手ふさがってるからぁぁっ!」
「脇腹の弱い里穂ちゃんがおもーい段ボール箱を持って隙だらけ…
 これをくすぐらない方が罪ってものでしょう」
「あぁもう、馬鹿ー!」

もう1つの理由は、彼女が学園中の少女達を見境無くくすぐっては屈服させていることである。
下級生から上級生、果ては高等部やら初等部の生徒達にまで手を出しているらしい。
しかし、それによって姫川柚子が疎まれているかと言えば、そんな事はない。
彼女のくすぐりは寡黙な堅物少女も爆笑せずにいられない強烈なものだが、いざ終わってみると
「意外と悪くなかったかも…いや、むしろ良かったような…?」と思えてしまうのである。
もはや天性のセンス、魔法の指とすら言っていい。
本人の容姿や明朗快活な性格も相まって、学園内での柚子の悪癖はせいぜい「美少女の困ったイタズラ」
程度の認識なのである。

柚子
挿絵:ブロッサムさん

「とまぁ、姫ちゃんを知らない子に解説するとこんな感じよね」

季節は9月。
まだまだ暑さの残っている時期なので、クーラーはフルタイムで稼働中。
自作のプロモーションビデオを流すと、唯崎琴音は室内の同士達をぐるりと見渡した。

「うちの学校にいて知らない方が珍しいと思うけど…」
「ですよねぇ」
「っていうか、この場にいる人間が知らないわけないでしょうに。唯崎、単にこのPV作ってみたから皆に見せたかっただけでしょ?」
「…静粛に!」

バン、と机を叩く琴音。

「無駄話をしている暇はナッシング。明日こそは姫ちゃんをぎゃふんと言わせないといけないんだから」
「今どき『ぎゃふん』って…あ、すいません」

思わず突っ込む後輩をじろりと睨みつける琴音。
続いて視線をやや上に向け、壁にかけられた横断幕を見て溜め息をつく。
横断幕には手書きで「☆第30回ぐらい 姫川柚子対策会議☆」とあった。
そう。現在この教室にいる5人は、姫川柚子対策委員会(通称:姫ちゃんバスターズ)のメンバーだ。
会員数は30名ほどいるが、一度に集まる人数はせいぜいこんなものである。
彼女らは、一言で説明すれば柚子のお気に入り。
要は、外見が良く、くすぐられた時の反応も申し分ない少女達だ。

「まぁまぁ、琴音ちゃん。なんだか気合いが入ってるみたいだけど、いいアイデアでもあるの?」
「ありますとも。今回こそはあの姫ちゃんを倒せますよ…!」

彼女らは、こうして暇な放課後などに集まっては「姫川先輩に復讐だ!」「姫ちゃんに正義の鉄槌を!」と柚子への対策を練っているのである。
もちろん本気で柚子を憎んでいるわけではなく、「たまにはこっちが攻めてやる!」程度の話だが。

「あの…」

そんな中、1人の生徒がおずおずと挙手した。

「こう言っちゃ何なんですけど、みんなで普通にくすぐり返すんじゃダメなんですか?私達、こんなに人数いますし」
「…あ。1年の2人はこの会議初めてなんだっけ」

私も最初はそう思ってたわぁ、と目を伏せる3年生のメンバー。

「駄目なの、あの子はいくらくすぐっても何ともないんだから」
「えぇっ!?」
「7人がかりでくすぐったのに澄ました顔しててねぇ」
「そうそう。で、後日に1人ずつたっぷりお仕置きされちゃいましたと。あれは激しかった…」

当時を思い出したのだろう、その作戦に参加していたメンバーの顔が紅潮している。

「そんな、そんなのズルいじゃないですか。勝ち目ゼロっていうか」
「そう、今まで私達は連戦連敗…でも、今回は違う」

そう言って琴音はキリッと決め顔を作る。

「ついに見つけたあの姫ちゃんの弱点。ここにいる5人だけに教えましょう」

修正も完了

くすぐり姫の陥落の「通しで読んで不自然な部分」「説明が足りない部分」に加筆修正しました。
これで今夜にはこっちに持ってこれます。

1週間以内には次の単発物もアップするつもりなので、そっちもよろしくお願いします。

完成

先月から私にしては相当なハイペースで書いてきた「くすぐり姫の陥落」が完結しました。
pixivはアップした作品の1つ1つに閲覧数とかが表示されるので、それもモチベーション上昇に繋がっていた気がします。
下剋上とか耳責めとか自分の好きな要素ばっかり取り入れてみたんですが、楽しんでもらえてると嬉しいですね。

今度は1回、多くても3回くらいの投稿で終わるようなSSを書きたいです。
となると、いつぞやみたいに絵師さんの作品に文をつける形になるかも…?
どうなるかはまだ分かりませんが、早い内に取り掛かりたいと思います。

THE・近況

スパ4が楽しくて生きるのが辛い…
使用キャラが豪鬼から春麗に変わりつつあります。
もうちょっと勝てるようになったらSS書きます。
プロフィール

きびなご 

Author:きびなご 
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