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くすぐり姫の狩猟 その1

昼休み。
「今日はなんとなく別の学年の子にちょっかいを出したいなぁ」
などと考えながら、姫川柚子は廊下を徘徊していた。
クラスメイトや同学年の友人とだらだらするのが定番コースなのだが、
今日はなんとなくパターンを変えたい気分になったのだ。
とりあえず別の階に行こうと階段に向かうと、上の階から見覚えのある少女が降りてきた。

「長沢先輩」
「ん?あぁ、姫ちゃん」

柚子に呼びかけられ、柔らかな笑みを返す少女。
3年生の長沢美紗である。
学年平均よりも少し身長が高く、やや癖のある黒髪を肩にかかる程度の長さに揃えている。

「どうしたんですか、その山盛りのプリントは。職員室に持ってく感じですか?」
「うん。松本先生からの課題なんだけど、なんか私が持ってくことになっちゃって…」

美紗はどうにも押しに弱いタイプで、昔からよくこういった面倒な役割を押しつけられてしまっているのだ。
4月にくじ引きで学級委員になってしまって以降、その傾向はさらに強まっている。

「ダメですよ、先輩。たまにははっきり断らないと」
「でも、誰かがやらないといけない事だから」

なんとまぁ良くできた人間だ。
感心しつつも心配になってしまう。
柚子はプリントの束の上半分ほどを受け取ると、美紗と並んで階段を降り始めた。

「えっ?」
「暇だし付き合いますよ。さっさと運んじゃいましょう」
「…ありがとう。姫ちゃんはいい子ねぇ」
「いや、先輩には負けますって」

別にやらなければいけないこともないし、このくらいは手伝って当然だ。
それに、何の見返りも求めていないわけではない。

_________
_____________
__________________

「「失礼しましたー」」

ぱたん、と職員室の扉を閉める柚子。
腕時計を確認すると、昼休みが終わるまでにはまだ20分もある。
あまりのんびりとはできないが、やりたい事をやるのには足りる時間だ。

「ごめんね、手伝わせちゃって」
「いやいやいや。私と先輩の仲じゃないですかー」

そこで美紗の両手を掴み、柚子は上目遣いで彼女を見上げる。

「―けど、もしもご褒美をもらえるんだったら、凄く嬉しいなぁと」
「ご褒美?」
「私の趣味、知ってますよね?」
「………あっ」

目を丸くしていた美紗だが、すぐに気付いたようだ。
白い頬に赤みが差している。

「あの…くすぐり、で合ってるよね?」
「です。あー、先輩みたいな可愛い子をくすぐれたら幸せだろうなぁ」
「そんな、私、絶対可愛くないし…」
「それは私が決めることです」

柚子は両手にやや力を込めて、真摯な表情で美紗を見つめる。

「えっと……でも…」
「先輩。いいですよね?」

ちょっと強引かなと思いながらも、視線を逸らさないまま押し切りにかかる。
今なら自分に対して「手伝いをしてもらった」という借りがある。
これで駄目ならまた別のチャンスに賭けるまでだ。
そして待つこと10秒。

「……うん」

そう呟いて、美紗は小さく頷いた。
「よっしゃああぁ!」と叫びたい気持ちを抑え、にっこりと笑う柚子。

「ありがとうございます!私、前から先輩と仲良くしたいなって思ってて」

偽らざる気持ちだ。
なんだかんだで学年が違う人間と触れ合うにはきっかけが必要だし、相手が上級生なら尚更である。
美紗は胡桃が部長を務めている美術部に所属しており、柚子はその繋がりで何度か軽く話したことはあった。
なので前々から親睦を深めたいとは思っていたのだが、いかんせん機会がなかった。

「じゃあ先輩、上行きましょう」
「上?」

きょとんとした顔の美紗の手を引き、柚子は階段を上がっていく。
ここ、職員室があるのは2階。
3~5階はそれぞれ1~3年生の教室になっている。
階段ですれ違う少女達のうち何人かが「あ、今日も1人捕まってる」といった視線を向けてくるが、気にしない。
柚子は美沙の手を離さないまま5階まで駆け上がり、更にその上へと向かう。

「姫ちゃん、この上って…」

屋上へ続く扉の鍵は施錠されており、そこから外に出ることはできない。
つまり、5階から屋上へ繋がる階段は基本的に無人ということだ。
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